私が大学生の時のエピソードです。

高校卒業後、実家を出てアパートで初めての一人暮らしを始めました。

自分で言うのも何ですが、いつも親の言うことを素直に聞き、期待に応えてきたような子どもだったので、親は心配しつつも「あなたなら大丈夫。頑張ってね。困ったらお手伝いに行くから連絡してね。」と言ってくれていました。

新生活が始まり、大学の単位も順調に取得しながら、楽しい毎日を送っていました。

そんな中、私に人生で初めての彼氏ができました。

大学の授業で近くの席になり、なんとなく話すようになった人でした。

彼は一言で言うと、謎めいた人でした。

無口でクールな印象ですが、たまに口を開いたと思うとユーモア溢れるワードセンスで、いつも私を笑わせてくれました。

ただ人見知りで、席が近くの私としか言葉を交わさず、同性の友人すら見たことがありませんでした。

「こんなに面白い人なのに、なんで?」といつも思っていました。

最初は授業でしか会うことがなかったのですが、ある日授業終わりにご飯に誘われ、一緒に学食でランチを食べることになりました。

彼はいつもと相変わらず無口で、食べている間は一言も話しませんでした。

食べ終わって一言。「あ〜、120%食ったわ。」

10年以上経った今でも覚えています。どういう意味だよって、ツッコミどころがありすぎる発言に、ただ大笑いしていたのを思い出します。

(たぶん、食べ過ぎたという意味なのかなと。)

それから彼と一緒にいる時間が増え、付き合うことになりました。学校の外でも遊ぶようになり、彼の運転で色々なところに遊びに行きました。

そして、初めて私の家に彼が泊まりにくることになった日のことです。

彼は緊張しているのか、いつも以上に無口でした。

家に上がり、飲み物とお菓子を出して、借りてきたDVDを見ました。

「アバウトタイム」は思い出の映画です。

彼は一言、「ずっと一緒に居たい」とだけ言いました。今考えると、精一杯プロポーズしていた?と思われますが、当時の私は恋愛下手。というか初めての彼氏。返す言葉がわからず、華麗にスルーしてしまいました。

次の日の朝、事件が起こります。

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ピンポーンと誰かが訪ねてきたので、私がドアの前に行くと、そこには母が立っていました。

え?なんで?と私はパニックになりました。携帯を見ると着信履歴が母でいっぱいに。やばい、昨日から見てなかった…。

でも、私以上にパニックになったのは、彼でした。

「お母さんがきた。」というと、彼は一言も喋ることができず、部屋の中をウロウロし出しました。

母は不審に感じたのか、いつまでも開かないドアをドンドン叩き始めました。

その音を聞いた彼はさらにウロウロ。

私は状況がよくわからなくなった末に、彼をベランダから外に放り出し、母を迎え入れました。

母は、「なにしてるの?」と不審がっていました。

私は「ごめんね、疲れてずっと寝てた」とバリバリの嘘を並べて誤魔化しました。

運動神経も良かった彼は、なんとかベランダから外に出て、帰れたようでした。

今思えば、普通に挨拶すればいいものを。

なぜあんな行動に出たのか、自分でもわかりません。

大学を卒業する頃。まだ付き合っていた私たちは、母にリベンジを果たし、きちんと挨拶にいきました。

リベンジだったということは、母は知るよしもありません。

社会人になっても彼との交際は続き、驚くべきことに結婚して、現在は子供もいます。

彼とのエピソードはたぶん、ほぼ全部鮮明に覚えています。

私の人生にとって、彼の出現、存在ほど大きなものはありません。

これからも、私の人生にどのようなエピソードを加えてくれるのか、楽しみでなりません。